加計学園問題で取り沙汰される、獣医師の不足、獣医学部の定員不足問題
国公立大学の充足状況
国公立大学については、一部定員を15%超過している大学(岩手大、農工大)があったが、元々の定員が少ないことから超過数は5人に満たないことがわかった。
しかし、他大学と共同で獣医学部を運営しようとしているところが散見される。これは、1つの大学で獣医学部に必要な教育を施すことが困難である、ということが理由として考えられる。
各大学の定員と在籍数と超過率
帯広畜産大学:定員40名
1年40人、2年41人、3年43人、4年47人、5年44人、6年34人 平均41.5人(103%)
北海道大学:定員40名
2年41人、3年43人、4年49人、5年38人、6年41人 平均42.4人(106%)
(1年は総合教育部で統一)
https://www.hokudai.ac.jp/pr/29zaisekigakusei.pdf
岩手大学:定員30名
1年33人、2年35人、3年32人、4年34人、5年34人、6年39人 平均34.5人(115%)
http://www.iwate-u.ac.jp/soumu/sozai/kyoikujoho/gakusei_tein.pdf
東京大学:定員30名
3年26人、4年27人、5年28人、6年31人 過年度2人 平均28人(93%)
http://www.u-tokyo.ac.jp/content/400065073.pdf
東京農工大学:定員35名
1年39人、2年38人、3年38人、4年40人、5年42人、6年45人 平均40.3人(115%)
岐阜大学:定員30名 27/120 4.4倍
1年32人、2年34人、3年31人、4年34人、5年31人、6年33人 平均32.5人(108%)
http://www.gifu-u.ac.jp/about/publication/publications/gaiyo/2017/p16-p19.pdf
大阪府立大学:定員40名 前期37/130 3.8倍、後期7/147 29.4倍
1年43人、2年42人、3年44人、4年43人、5年45人、6年45人 平均43.6人(109%)
鳥取大学:定員35名 36/210 5.8倍
1年36人、2年35人、3年36人、4年35人、5年36人、6年43人 平均37.3人(106%)
山口大学:定員30名
1年32人、2年32人、3年32人、4年34人、5年28人、6年30人 平均31.3人(104%)
鹿児島大学:定員30名
1年32人、2年36人、3年30人、4年29人、5年31人、6年35人 平均32.2人(107%)
教育研究活動等の状況|国立大学法人 鹿児島大学~進取の気風にあふれる総合大学~
http://www.kagoshima-u.ac.jp/about/teiinn-gakubu.pdf
宮崎大学:定員30名
1年31人、2年30人、3年31人、4年30人、5年31人、6年31人 平均30.6人(102%)
入学者に関する受入方針及び入学者の数、収容定員及び在学する学生の数、卒業又は修了したものの数並びに進学者数及び就職者数その他進学及び就職等の状況に関すること|宮崎大学
私立大学の充足状況
国公立大学が、充足率超過率が1桁、あるいは超過数が数名であったのに対し、私立大学は軒並み10%を超える超過率である。また、谷間の年度があるために、学部としての超過率が十数%に押さえられているだけで、麻布大学などは定員120に対し、学生155名、超過率30%という学年すらある。
本来定員とは「学生を受け入れるキャパシティ」のことで、この人数以上になるとキャパオーバーになる、ということだ。
つまり私立の獣医学部はキャパオーバーを続けている、ということになり、教育の質が果たして担保できているのか、という疑念が残る。
もちろん、私立である以上、国公立の滑り止めとして使われることから、合格を定員より多く出す、ということは一般的である。
各大学の定員と在籍数と超過率
酪農学園大学:定員120名
1年137人、2年人、3年人、4年人、5年人、6年人 平均人 116%
北里大学:定員120
1年132人、2年140人、3年143人、4年133人、5年144人、6年141人 平均138人 116%
https://www.kitasato-u.ac.jp/daigaku/education_info/download/2016_2-2admissioncapacity2.pdf
麻布大学:定員120名
1年151人、2年152人、3年155人、4年138人、5年145人、6年153人 平均149人124%
日本大学:定員120名
1年142人、2年146人、3年139人、4年122人、5年138人、6年131人 平均136.3人(114%)
生物資源科学部/入学者、入学及び収容定員、学生数、卒業(修了)者数|教育情報|学部情報|日本大学生物資源科学部
日本獣医生命科学大学:定員80名
1年92人、2年91人、3年96人、4年96人、5年96人、6年96人 平均94.4人 118%
私立大の恒常的な定員超過についての不作為
恒常的にこれだけの定員超過率であるなら、所轄官庁である文科省が増員や新設に対して動いても良さそうなものである。
「文科省が定員オーバーの状況なので、定員を増やす方向に動く」
「農水省が、実際の獣医師の充足状況から、定員の増減可否を決める」
というのが、世情を反映するために必要なことではないだろうか?
帯広畜産大獣医学部出身の方の意見
簡単に言うと、「教員不足」が全ての根幹にある。
定員を増員するにも、学部を新設するにも、教員を確保することが重要であり、それが今までできなかった。
だから、各大学は得意分野を持ち寄り相互補完する形での共同獣医学過程という形に変わっていった。
つまり、現状に即した対応策を考えているのだ、ということだ。
加計学園の教員は高齢教員が多い?
朝日新聞が7/7にだした記事によると、加計学園の確保した教員には高齢教員が多く、問題である、ということだ。
関係者によると、加計学園が3月に文科省に提出した非公表の獣医学部の新設計画には、専任教員に就任予定の72人のうち、最初の卒業生が出る開設6年後に65歳以上になる教員が15人、約20%いた。15人の多くは70歳以上になる。
開設6年後(2024年)に65歳以上になる、つまり、現在58歳以上の教員が15人いる、ということだ。
裏を返せば、現在57歳以下の教員が57人いる、ということでもある。
博士号取得者の比率も問題とされている。
既存の大学では98%が博士号取得者であり、加計学園のリストでは博士号保有者が9割以下だそうだ。72人中64人以下であれば9割を割る。8割以下と言っていないところを見ると、58人以上は博士号保有者がいるものと考えられる。
高齢教員が問題かというと、必ずしもそうではない。企業や他大学とのネットワークを持っていたり、後進を育てようという熱意のある人もいる。
また、開学していない大学に就任する教員の数であり、開学して実績が見えてきたら、教員を集めやすくなる可能性すらある。
加計学園サイドの応募書類:海外での指導経験者も入れ、英語の授業も実施できるようにした
加計学園は、20年に渡り、今治市と協力して獣医学部新設に取り組んできた。あまり報道されることのない、加計学園の獣医学部新設内容も、文科省への提出書類として公開されている。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/hiroshimaken_imabarishi/imabari/dai2_shiryou6.pdf
今治市の政府提案書類も、2007年度のものから公開されている。
ちなみに、2007年というのは、第一次安倍政権の時代であり、お友達を通すならば、このタイミングで通していればよかったのではないか?という疑問が残る。
まとめ:数字を見ると、文科省の問題ではないかと疑問が湧き上がる
博士課程を持つ教員が足りないために、増員できなかった、というのであれば、それこそ博士課程の学生への待遇を改善し、教員を志望する獣医師を増やす施策を取るべきだったのではないだろうか?
いずれにせよ、定員超過で教育の質が担保できない状態は改善する必要があるだろう。これも放置してはいけないのではないか?
これらの問題を長年放置していた文科省の責任というのは問われないのか、疑問である。
*おしまい*