トランプ大統領は単独で選挙に勝ったのではなく、有能なブレーンがいた
イギリスの経済雑誌に「The economist」というのがあります。
結構有名で、日経に一部翻訳が載っています。(1記事のサマリーくらいですが)
そのThe economistは昨年の大統領選以来、トランプ大統領に関する記事が毎回載っているのですが、そこにこういう一節がありました。
「アメリカの保守的WebメディアBreitbartの編集長が、トランプの戦略的参謀を務めている」
BreitbartなんてWebメディアの存在を知っている日本人はほとんどいないでしょう。
2016年の5月頃からトランプ大統領が色物ではなく本格候補である、と発信していた江崎道朗さんは、Breitbartを読んで、トランプ陣営の動きを観察していたそうです。
そりゃ、戦略的参謀が編集長のメディアなら、一番フレッシュな情報を持っていて当然ですね。
さて、トランプ大統領について日本で目にする情報は、新聞やテレビによるものがほとんどでしょう。
こういったメディアは、割とトランプ大統領に批判的な姿勢の時が多いと思います。
それはなぜかというと、情報源が偏っている、の一言につきます。
どう偏っているか?アメリカのメディアは、特に中立性を求められていないため、バイアスがかかった情報を報道しています。
これは、事実の歪曲さえしなければ、分析(解釈)した内容を掲載して良い、ということでしょう。日本では、中立報道をしないといけないことになっているのでこうはいきません。
日本のアメリカ情報は、リベラルメディアからしかとっていない
アメリカの報道テレビは、NBC、ABC、CBS、CNN、FOXが大きなものです。
特にCNNやABCはよく見かけるイメージがあります。
FOXは見かけません。
リベラルか、コンサバティブか、というのがメディアの二大バイアスです。
これを前述の5つに当てはめてみると・・・
リベラル:NBC、ABC、CBS、CNN
コンサバ:FOX
実は、日本のメディアは、海外の報道情報は海外の提携メディアからもらうことにしています。
NHK, フジ:ABC
日本テレビ:NBC
テレビ朝日:CNN
TBS:CBS
というのがその関係です。FOXは日本のテレビと提携していません。
ということで、日本にはコンサバ系メディアの情報は入ってきません。
つまり、一般的なアメリカ人全般ではなく、リベラル系アメリカ人の観点で分析された情報しか、日本には届いていないのです。
では、トランプ大統領とその周辺が何を考えて動いているのか、というのを考えるときには、どういうバイアスの人が分析した内容か、ということを常に考える必要があります。
マスコミが報じていない、トランプ大統領とそのブレーンを分析した本
日本のテレビは海外でのリベラルメディアからしか情報を得ていません。なので、極力コンサバ系、つまりアメリカ保守派の情報を得ないといけません。
現代アメリカ保守主義運動小史 (第一プリンシプル・シリーズ)
- 作者: リーエドワーズ,Lee Edwards,渡邉稔
- 出版社/メーカー: 明成社
- 発売日: 2008/08
- メディア: 単行本
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江崎道朗さんのマスコミが報じないトランプ台頭の秘密は、非常にわかりやすく噛み砕いて、トランプがいかにして共和党の代表になったのか、それを支えたアメリカの草の根保守というのはどういう人たちか、というのが書かれています。
また、その人たちの思想から予測される、トランプ政権の方針が日本に与える影響を分析しています。特に国家防衛について、日本の周辺には、強烈に軍備拡大をしている国があり、領空侵犯、領海侵犯を繰り広げています。
そういった挑発を受けて、仮に日本が攻撃を仕掛けられた際、日米安全保障条約によりアメリカが出動して、追い払ってくれる、というのが何を意味して、どれだけの実現性があるのか、そういったことを考えさせられます。
日本を守るために、アメリカ人の命をかけるのか、日本もきちんと防衛予算をつけて、軍事力のバランスをとることにより、予防的措置を取っていくのか。
まず問われるのはそういった内容でしょう。
ちなみに、日本以上に、アメリカのリベラルは強烈に強く、保守派は負け続けてきたそうです。それがアメリカ保守主義運動小史にて、活動やどういう理念にて行われてきたのか、ということが書かれています。
アメリカの民主党にも、共和党にも、国家国民のことを考えているように見せかけて、私服を肥やす、権力を握ることばかり重視している政治家が多くいます。
その中で、国家を第一に考えることで、国民を守り、豊かにする、という発想の考え方で活動を続けてきた人たちがいた、ということがわかります。
両隣の大国がぶつかりあったら、間の日本はどうするのか。米中の衝突について考える本
トランプ大統領により新設された政府機関国家通商会議(National Trade Council)のディレクターに指名されたピーターナヴァロが「米中もし戦わばー戦争の地政学」という本を書いて話題になっています。
この国家通商会議は、貿易や産業と国防とまとめて分析し、NSCと協調して外交戦略を作る機関です。つまり、国家通商会議という名前ですが、地政学的観点、地理経済学的観点の双方から、アメリカについて考えるシンクタンク、ということになるかと思います。
(ジオポリティクス、ジオエコノミクスと、人間が物理的存在である以上、地理的要因からはまだ逃れられませんからね)
「この米中もし戦わば」は、ピーターナヴァロの発する問題(だいたい4択クイズ)と、その解説、という形を取っています。
そのため、非常にわかりやすい語り口も相まって、頭にすっと入って来る内容です。
書き口としても、イデオロギーに関わる部分と、事実に立脚した部分が明確にわかるため、ピーターナヴァロの解釈はこうだろうけど、、、、という読み方もしやすいです。
(2017/1/26現在Kindle版は21%のポイントがつくため、実質2割引で購入可能です。迷うならとりあえず買って読みましょう。後悔はしません)
さらに、米中の関係を地政学的観点から説明した本が、すでに版元が倒産しており絶版ですが大国政治の悲劇です。
絶版なのですが、英語が読める方は、原著の「The Tragedy of Great Power Politics」なら、2000円弱で入手可能です。
こちらも、中国が平和的に台頭することが、あり得るのか、ということを歴史と、地政学の観点から紐解いています。
対中強硬派のドラゴンスレイヤーは、中国の軍事拡大をどう読み解くのかがわかる本
アメリカ人の対中スタンスには2種類あります。
パンダハガーとは、中国に融和的な人のこと。パンダがきたら抱いてしまうことを揶揄しています。(大体はお金とともにやってくるそうですね)
対するドラゴンスレイヤーは、その名前の印象の通り、対中強硬派です。
これまでの歴史を見ても、中華人民共和国は周辺諸国を侵略し、領土の拡大を図ってきました。そのために、国際法の独自解釈、スパイによる間接侵略などを多数実施しています。
そういった姿勢を警戒し、警告を出しているのがドラゴンスレイヤーの代表ピーターナヴァロを始めとする、アメリカの保守陣営なのです。
これも英語版しかありませんが、中国の軍事拡大が意味するところを分析し、その攻撃性を警告した「Death by china」は、ぞっとすること間違いなしです。動画がYoutubeでも公開されています。
Death by China: Confronting the Dragon – A Global Call to Action
- 作者: Peter W. Navarro,Greg Autry
- 出版社/メーカー: Pearson FT Press
- 発売日: 2011/05/05
- メディア: Kindle版
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Death By China: How America Lost Its Manufacturing Base (Official Version)
トランプの経済政策が実は高度な経済理論に基づいていることを紐解く本
トランプ大統領が提言した内容が一体何に基づいているのかを丁寧に解説しているのが、ザ・トランポノミクスです。
トランプ大統領の政策について解説している人は、軍事関係者や。国際政治学者が多く、経済学者が少ない傾向にあります。
その数少ない経済系の論者の本がこのザ・トランポノミクスです。
非常にわかりやすく書かれていますので、さらっと読んでも、とりあえずトランプが根拠もなく騒いでいるわけではなさそうだ、ということがわかります。
何度か読みながら、マクロ経済の教科書を片手に理論を紐解いて行くとよくわかるようになると思います。
トランプの勝利を予測した国際政治学者による、政治の初歩からトランプ大統領と日本の今後の話
トランプ大統領の誕生を予測していた国際政治学者に藤井厳喜さんがいます。
トランプ大統領が誕生したことにより、日本は今後どうするべきか、また、アメリカと日本の経済はどうなっていくのかを改めて予測、分析しています。
トランプ本はトランプが大統領選に勝った途端に大増殖しましたが、勝ち目のないと一般的に言われていた時代から、きちんとアメリカ大統領選について、フラットに分析していたその知見から学ぶのは、最初の一歩としては良いと思います。
日本はどう対応するか=>日米対等と、受け身の姿勢、守りの分析から、攻めの姿勢まで、多角的に分析されています。ここから、日本が主体的に米国と対等な関係を気づいていくために必要なことというのを考えるのが、第一歩でしょう。
特に、日本では地図の見方を教わりません。地理は、経済、軍事戦略などに多様な影響を与えます。その理論を簡単に噛み砕き、国際政治に応用したものが、「最強兵器としての地政学」です。
地政学というと、クラウゼヴィッツの戦争論が有名ですが、初学者が読むには前提知識が多く、難解です。その初学者向けの補助の役割を果たす本が新しく出ました。戦争論入門なので、入門書としてオススメです。
あるいは、ロシアのプーチン大統領をテーマにして、世界の覇権を狙う国がなにを考えながら動いているかをわかりやすいストーリーで語っている、日本人の知らない「クレムリンメソッド」もおすすめです。
日本人の知らない「クレムリン・メソッド」-世界を動かす11の原理
- 作者: 北野幸伯
- 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
- 発売日: 2014/12/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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まとめ
どんな本でも、著者の主観が入る限り、何かしらのバイアスがかかっているのは間違いありません。だとすると、それがどういう質のもので、その人がどういう背景を持っているのかわかった上で、妄信せず整理をしながら読み進める、という姿勢が大事ですね。