雑記

Fintech(フィンテック)業界の主力企業が衝突!フリーの特許とは?

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freee(フリー)株式会社がマネーフォワードを特許侵害で訴えた

2016年12月8日、クラウド会計のfreeeが、マネーフォワードに特許訴訟を起こしました。

奇しくも大日本帝国真珠湾を爆撃した、大東亜戦争(太平洋戦争)開戦の日です。狙ったのでしょうか?

corp.freee.co.jp

まだ続報は出ていませんが、プレスリリースでマネーフォワードも応戦しています。

マネーフォワード側は、特許を侵害していないと主張

同日、12月8日に、マネーフォワードもプレスリリースを出しています。

一部報道機関における特許侵害の記事について | 株式会社マネーフォワード

freee(フリー)の特許には抵触していない、という主張です。

戦い方としては、freee(フリー)の特許が妥当な「新規性」と「進歩性」を持っているかどうか、という争いではなく、マネーフォワードのシステムがfreeeとは違う、ということを裁判で争う、ということになりそうです。

個人的には、こういう訴訟はいつか起こるんだろうと思っていました。

というのも、freeeが自社ホームページで自社特許についてアピールしていたからです。

www.freee.co.jp

どちらも日本のfintech(フィンテック)企業としてトップランナーです。

しかも、マネーフォワードの社長辻庸介さんも、freeeの社長佐々木大輔さんも、日本の起業家として市場を盛り上げています。

どちらもクラウド会計という機械学習を使った技術系企業です。

特許を使ってどのように、他社に負けない独自の技術を開発していくかと言うのが焦点です。

といっても、特許庁に登録されている公報を検索する限り、クラウド会計大手3社(freee, マネーフォワード,弥生)によって、出願され、登録まで至っている特許は今回のfreeeの2件だけなので、あまり特許に関心のなかった業界だったのかな、という印象です。

freeeは特許を出願してから1度拒絶されている

特願2013-216457というのが、freeeの特許の出願番号です。

(j-patで検索するときに使って下さい。リンク取れないんです)

経緯としては、

2014/7/14 出願

2015/12/1 審査請求

2016/2/23 拒絶

2016/3/3 補正

2016/4/26 特許査定

と、実は2年前に考えられ、一度拒絶(明確性が不足している)判定を受けつつも、補正を行なうことで見事特許として認められた、というものです。

特許と認められる要件は
「新規性(過去に存在しないか)」と
「進歩性(同じような仕事の人が簡単に思いつかないか)」という2点です。

拒絶理由にあった明確性は、請求項の中に使われている指示語が、明確でない、ということであり、修正すれば済む瑣末な問題でした。

freeeの特許は「言語分析」と「フィルタリング」と「人間の振り分け方の機械学習

さて、今回のfreeeの特許がどのようなものかというと、特許公報の中から重要そうなところを引用します。

会計項目の自動仕分けをしてくれるクラウド会計システム

【請求項1】 クラウドコンピューティングによる会計処理を行うための会計処理装置であって、 ユーザーにクラウドコンピューティングを提供するウェブサーバを備え、前記ウェブサーバは、 ウェブ明細データを取引ごとに識別し、 各取引を、前記各取引の取引内容の記載をキーワードに分節し、各キーワードに対応づけられた1又は複数の勘定科目の出現頻度を参照して、特定の勘定科目に自動的に仕訳し、 日付、取引内容、金額及び勘定科目を少なくとも含む仕訳データを作成し、 作成された前記仕訳データは、ユーザーが前記ウェブサーバにアクセスするコンピュータに送信され、前記コンピュータのウェブブラウザに、仕訳処理画面として表示されることを特徴とする会計処理装置。

要は、クラウド会計システムです。取引データを自動解析して、自動仕分けしてくれる、ということです。

取引データを分析して、キーワードと勘定科目の関連性をスコア計算する

【請求項3】 前記仕訳は、勘定科目ごとに、各キーワードが有する出現頻度をスコアとして合計して、最も高いスコアの勘定科目に自動的に仕訳をすることを特徴とする請求項1又は2に記載の会計処理装置。

取引データの分析の仕方です。

仕訳項目に含まれるキーワードの出現頻度を、登録先の勘定科目の候補ごとにスコア計算します。このスコアが最も高いところが、取引データの仕分け先と判断されるというものです。

関連性スコア計算の精度を上げるために不要なもののフィルタリングをする

【請求項4】 一文字の記号又は数字のみのキーワードは、前記スコアの合計において考慮しないことを特徴とする請求項に記載の会計処理装置。

どのように仕訳項目を精度良く分析していくか、というのがこの項目です。

仕訳項目を言語分析したときに、一文字の記号や数字がキーワードとして出てくる可能性があります。

例えば、フジスーパーで2016年の1月23日に買い物した記録が「フジスーパー2016-0123」と登録されているとします。

これを言語分析すると、「フジ」「スーパー」「2016」「-」「0123」という要素に分けられます。このとき数字だけの「2016」「0123」と1文字の記号である「-」は計算しないということです。

クラウド上のユーザーデータを集積して関連性の精度を上げる

【請求項7】 前記出現頻度は、前記記憶部に格納された、複数のユーザーのユーザールールに基づいて定められることを特徴とする請求項6に記載の会計処理装置。

クラウド会計システムなので、各ユーザーごとの仕訳データもサーバー上に保管されています。そのため、他のユーザーが仕分けした情報も分析して、自動仕分けの精度を上げていく、ということです。

freee株式会社プレスリリースより引用
https://www.freee.co.jp/news/smb-ai-labo-0627-4966.html

機械学習を使うクラウド会計ソフトとなると、なかなか逃げるのは難しそうな基本特許

なんとなく、仕組みとしては、自然言語分析とクラウドシステムの特徴を単純に組み合わせただけのように見えます。

しかし、そのまま行なうと、仕分けにノイズが入り込むことで、精度が向上しない、あるいは、精度向上するまでに時間がかかる、ということだったのかと思われます。

どのように既存の技術を組み合わせて、他の人が思いつかない新しい使い方を発見し、人の役に立てるか、ということを考えた結果と思うと、非常に面白いですね。

そう考えると、これからクラウド会計を始める人や、
勘定科目や、仕分けの多い人は、freeeに乗り換えたほうがより便利に使いやすくて安全かもしれませんね。

freeeの公式サイトを見てみる人はこちら

副業で個人事業主として確定申告するくらいなら家計簿と連携できるマネーフォワードの方がやっぱり便利

そういっても、この自動仕分けが何もしなくても完全に処理をしてくれるかどうかは、使い続けないとわかりません。

特にfreeeは家計簿ソフトまでは持っていないため、家計簿も、確定申告も、という人にとってはマネーフォワードの方が使いやすいと思います。

僕もマネーフォワードを家計簿と会計と請求書といろいろ使っているので、実はこの訴訟もマネーフォワードが勝って欲しいなーなんて思っています。

いずれにせよ、今後の動向に注目です。

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